それから学校へ行くのが楽しみになった。瞬に会えた時、瞬を見つけた時、それ以外も全て私の世界が変わった気がした。
瞬を狙っている子は沢山いる。だから、私の想いは届かなくていい。周りからの攻撃も受けなくて済むし、なによりフラれて話せなくなるよりはいい。
そう決意したばかりなのに、放課後、2人きりになってしまった。見た目、声、どこを取っても好きだなぁって思ってしまって困る。
さらに困ることに、
「なぁ、これから一緒に帰んない?」
瞬の提案を断れる訳もなく、一緒に帰ることになってしまった。帰る道すがら色んな話をした。好きな本の話、進路の話、趣味や好きな音楽。それから、恋愛についても。
「茜って、好きなやついるの?」
この一言は非常に困る。だから、質問を返すことにした。
「瞬こそいないの?」
呼び方は自然に変えた。変えても違和感がないくらい仲良くなれたのが嬉しい。
瞬のほうをみると真っ赤な顔をしていた。好きな人いるんだ……。そう思うと、さっき嬉しかったのが無かったかのように、距離を感じた。
「瞬の好きな子ってどんな子?」
思い切って聞いてみる。傷つく覚悟が出来たわけじゃないけれど、好きな人の好きになった人だ。素敵な人だろな……。
「まず、笑顔が明るい。あと、趣味が合う。自分を曲げないところとか、いつも1人でいて静かなところとかが好き。挙げだしたらキリがないな。」
「へ、へー、そんな素敵な人がいるんだね」
下手な相槌になっていないか不安になる。
「いるよ。俺の目の前に。というわけで、茜が好きです。付き合ってください。」
瞬はいつも通り軽い口調で話しているが、顔は真っ赤だった。私はというと、驚きすぎて声が出せないでいた。ので、瞬に抱きついた。
「私も好きです。よろしくお願いします。」
瞬の、好きな人の彼女になった瞬間。
私にはこの瞬間が全てだった。今もなおこの時を超える幸せは他にない。 同時に、過ぎ去った幸せが戻ってくることはない知った……。