「中学一年の途中まではちゃんと学校も行ってたんだよ。でも病気がわかってから、どうせ死ぬのならって、自由に生きたくなったんだ」

悲しそうにもしないし、世間話をしているかのように普通に話すので困惑する。
まだ半信半疑だった。
だって、悲愴でもないし、こんなにあっけらかんと言えるもんなのか?


「未来のない生活ってつまらないよ。夢も希望も無くなるってあれほんと。
だってさ、何をがんばっても、なんの意味もなくなるんだよ?
無気力にもなるよね。

それで、毎日意味もなく、好き勝手にフラフラしてたんだけど、偶々寄った本屋の片隅でフォトコンテストの展示を見たんだ」

そういえば、大手の本屋で、夏の間だけ展示してくれていた。


「その時、凄く胸を打たれた。
ワクワクした気持ちになったのは久しぶりだった。
僕も写真をやってみたいなって思った。
日記のように毎日撮って、写真を僕の生きた証にしたらどうかって考えたんだ。
僕が撮れる写真はあと500枚だ」

にわかには信じられなかった。
500枚?
500日後に18歳になるってことか?


「誕生日いつなの?」

「4月1日」

「は?」

「エイプリルフールだね」

「はぁ? なんだよ嘘かよ?!」


俺は騙されたのだと思ってカッとした。
冗談にも程がある。

怒った俺に、白井は「嘘だといいね」と眉を下げて笑った。