きっかけはなんだったっけ。
そうだ。シャッター音が重なったんだ。


まったく同じタイミングでシャッターを切るなんて、なんたる偶然なんだと思った。
ライバル心と興味。

一体どんな奴が撮影をしているのだと、横を向いて、ハッと目を丸くした。

数メートル先に立って、同じ方向にカメラを構えていたのは、転入生だったからだ。


「あー……転入生の、白井……偉琉《タケル》だよ、な?」

名前間違ってないよな、とぼそぼそと喋った。
白井はなぜか顔を赤くした。
人見知りか?


「そうです」

「同級生なのに、なんで敬語なんだよ」

「緊張しちゃって」

思わず笑うと、白井はそうだねと頬をかいた。


「あー、クラス馴染みにくい?」

転入してまだ間もないしな。


「黒木君にだよ」

「は、俺? もしかして怖い?」

「違うよ。
黒木総一郎(クロキソウイチロウ)君。
君、フォトコンテストで賞を取ったでしょう。展示会で君の写真を観たんだ」

「え! マジ?!」

「僕ね、黒木君に憧れて写真を始めたんだ。
同じ景色を見てみたくて一緒の学校まで通い始めたんだけど、いざ本人を目の前にすると緊張しちゃって」

白井はえへへと頭を掻く。

ただファンだと言うには、聞き捨てならない発言があった。
自分がきっかけとなり、カメラを始めたまでは嬉しいとして。

よくよく見ると、白井のカメラ持っているカメラは俺と同じ色違いのもの。

「……ええと、そのカメラは」

「ああ、黒木君の使ってるカメラ調べて、僕も同じもの買ったんだ。いざ始めて見ようって思っても、何使っていいかわかんなかったから。
どうせなら憧れの人と同じ機種がいいでしょ」

顔を赤らめる白井に、俺は内心ちょっと引いた。
ストーカーかよ。