あと500回シャッターを切ったら



きっかけはなんだったっけ。
そうだ。シャッター音が重なったんだ。


まったく同じタイミングでシャッターを切るなんて、なんたる偶然なんだと思った。
ライバル心と興味。

一体どんな奴が撮影をしているのだと、横を向いて、ハッと目を丸くした。

数メートル先に立って、同じ方向にカメラを構えていたのは、転入生だったからだ。


「あー……転入生の、白井……偉琉《タケル》だよ、な?」

名前間違ってないよな、とぼそぼそと喋った。
白井はなぜか顔を赤くした。
人見知りか?


「そうです」

「同級生なのに、なんで敬語なんだよ」

「緊張しちゃって」

思わず笑うと、白井はそうだねと頬をかいた。


「あー、クラス馴染みにくい?」

転入してまだ間もないしな。


「黒木君にだよ」

「は、俺? もしかして怖い?」

「違うよ。
黒木総一郎(クロキソウイチロウ)君。
君、フォトコンテストで賞を取ったでしょう。展示会で君の写真を観たんだ」

「え! マジ?!」

「僕ね、黒木君に憧れて写真を始めたんだ。
同じ景色を見てみたくて一緒の学校まで通い始めたんだけど、いざ本人を目の前にすると緊張しちゃって」

白井はえへへと頭を掻く。

ただファンだと言うには、聞き捨てならない発言があった。
自分がきっかけとなり、カメラを始めたまでは嬉しいとして。

よくよく見ると、白井のカメラ持っているカメラは俺と同じ色違いのもの。

「……ええと、そのカメラは」

「ああ、黒木君の使ってるカメラ調べて、僕も同じもの買ったんだ。いざ始めて見ようって思っても、何使っていいかわかんなかったから。
どうせなら憧れの人と同じ機種がいいでしょ」

顔を赤らめる白井に、俺は内心ちょっと引いた。
ストーカーかよ。