初めて偉琉(たける)と出会ったのは高校二年の10月の終わり頃。中途半端な時期にあいつは転校してきた。



偉琉の第一印象は大人しそうなやつだな、だった。こんな時期に転校だなんて、いじめかと思うほど。


色白で、細くひょろっとしていた。
愛想が悪いわけではなかったが、特に誰とつるむこともなく、一人で携帯を弄っていることが多かった。

クラスでも接点がなかった俺達が仲良くなったきっかけは、カメラだ。




俺にはお気に入りの場所がある。

海沿い。大型遊覧船のデッキだ。
ここからの撮影は空も海も海鳥も、海浜公園で遊ぶ子供に散歩をする老夫婦も、高層ビル群に夜景、その日の気分で被写体を選べる。
ゆったりと移動しながら、その一瞬一瞬で目にとまった被写体をとる。

季節や天気によって表情が変わるものだから、それが面白くて、一時期は毎週末ここに来ていた事もあった。

たまたま応募したフォトコンテストで、賞をとった思い入れのある場所でもあるから尚更だ。




偉琉と偶然出会ったあの日も、俺はいつものようにデッキから撮影をしていた。