『......今日の総一郎は元気がなかったね』

俺は涙でグシャグシャになった顔を上げた

『どうせ僕の事気にしてたんでしょう。態度に出過ぎだよ。話しかけても上の空で全然笑わないし』

そうだったかもしれない。
たしかに偉琉の事が気になって落ち着かなかった。


『あのさぁ。……もし、もしもだよ。写真で行き詰まる事があったらさ、次のフォルダを開いてみて』

データを確かめると次のフォルダには【君が彩る世界。君色に染まる世界】いうタイトルがついていた。
どういう意味だろう。


『自分を変えられるのって自分だけだと思うけど、でも僕は総一郎に助けられたから。助けてもらって変われたから。
だから僕も、総一郎の役に立てたら嬉しい』



フォルダを開くと大量の写真データが出てきた。

「こんなに……一人でも撮ってたんだ」

懐かしい景色が大量に出てきた。

校舎、部活の風景、落書きした黒板、買い食いしたアイス、通学路の猫。二人で出掛けた美術館、神社、花園に雪山。


そして、


「……俺」

俺の写真だ。

それが一番枚数が多かった。
撮影スポットを探しているところ。カメラを構えている後ろ姿、三脚を立てたり部品の整備をしたり。


「いつの間に」

俺はまた泣けてきた。
どの写真の自分もとても良い顔をしていたから。ファインダーを覗く自分の目は、最高に生き生きとしていた。


鼻を啜りながらスクロールしていくと、毛がボッサボサのマルチーズと、ピースをしている駄菓子屋のおばあちゃんの写真がでてきて、俺はぶはっと吹き出した。


「これかよ……!」

どうやら一枚だけ撮っていたらしい。「こりゃ本当に酷い……」久しぶりにお腹が痛くなるほど笑った。

ひとしきり笑い終わると、気持ちがスッキリしていた。
怖いものなんか何もなくて、未来だけを見据えていた当時の自分を眺める。

偉琉に背中を押された気がした。
あいつは俺が足踏みしてしまうことをわかっていたのだろうか。