『約束だよ』
写真の裏に書かれた文字に涙を落とした。
「下手くそ……」
マジックで、"0"と大きく書かれた500枚目の写真は、日付が変わってすぐに撮ったのか、自室から眺める夜空だった。
焦っていたのかもしれない。上手く撮れていなくてぶれていた。
貰って欲しいと渡された500枚目の写真は、それ以来ずっと引き出しの中で眠ったままだ。
『僕が死んだら、続きの番号から写真を撮ってほしいな』
『続きって0からマイナスしていくってこと?』
『総一郎は未来を紡ぐんだから、増えていったらどうかな』
そう言った偉琉に、俺は「別にいいけど」と軽く返事をした。写真を撮る仕事に就きたかったし、言われなくても毎日撮るつもりだったから。
それに、そんな話をしたときは偉琉が居なくなるって実感がなかったから。
しかし0から数字は一つも増えていない。
偉琉に見せれるような景色は、何一つ撮れていなかった。
あんなにも誉めてくれたあいつに、心がないと評価された写真を見せたらがっかりさせてしまう。そんな写真に番号はふれなかった。
死というものを理解出来ていなかった。
こんなにも虚無でやりきれなくて、寂しいものだと知らなかったんだ。
泣いても泣いてもこの気持ちをぶつける先がなくて、溺れるようにもがいていた。
俺はまだ、偉琉が居ないっていう現実を受け入れることが出来ていない。