祖母の葬儀の夢を見る。
沢山の人に愛されていた祖母。その場を共有している全員が悼んでいる、惜しんでいる、心から悲しみ、冥福を祈っている。
品のいい花輪、心のこもったお供え物。荘厳な読経。ひとりひとりがこの場にいることを本当に大切にして一丸となっている。
私は他人でも、家族でも、誰に対しても接するときは、心がどんなに苦しくても、身体がどんなに苦しくても、ほとんど必須事項のように笑みを浮かべるようにしている。
ばあちゃんが私の笑い方が好きだって言っていたから。そうして一人になった時、疲労によろめいて、いろんなことを考えたり、お風呂で温まってくるとぼろぼろ泣いている。自らの死を考える。
毎日、自分だけが生きている。最愛の拠り所を失って、それだけで私の中で悲しみが膨らんでいく。身体の奥底で、どうしようもない自分への嫌悪感がある。
大切なものを無くした世界で生きなくてはいけない? そんな馬鹿な話は無い。
けれど、私は怖がりだから。独りぼっちは怖いから。だから、皆が好きだと言ってくれた笑みを見せるようにして、皆から嫌われない様に。祖母はもういないから、味方を失わない様に。どんな時も笑って愛嬌を振りまくようにして。
「だけど、もう、疲れたよ」
祖母の遺骨を前にして、ぽつりと私は呟いた。遺骨を少しだけ手に取って、粉々にして。
人の力ではどうしてもできないことが、この世には沢山あるのだと。絶望という名の壁という形として目の前に現れて、初めて知った。いくら頑張っても砕けない壁なのだ。
私には何が出来た。何もできなかった。ただ、全てを見送って過ごす毎日だ。
何度も死のうと思った。死という存在が近くに存在するのだ。何かの選択肢を選ぶとき、必ず死という存在がある。今までは、その死を選択せず生きてきた。ただ、それだけだった。
人間、生きるのが自由なら死ぬことも自由だと思う。生きていたいと思う人が、生きればいいと思う。
死は眠りに過ぎない。それだけの事ではないだろうか。眠りに落ちれば、その瞬間、一切が消えてなくなる。胸を痛める憂いも、肉体に付きまとう数々の苦しみも。
「皆に愛されて大切にされていたばあちゃんが死んだのに、お前なんかが生き残るなんて許さないから」
もう一人の、まるで幼子のような自分が背後に立ち、私を指さして泣きながら怒号を浴びせる。
返せよ、私のばあちゃんを返してよ。そう何度も罵っているようだった。
分かっているよ。何度、そう返事をしただろう。
燃え落ちた笑顔、真珠の骨。繰り返し、繰り返し、私は何度も飽きることなく祖母の葬儀の夢を繰り返し見て、骨となった祖母を私のモノにしようとする。一つまみの欠片を摘まんで、そのまま飲み込む。
ごくん、と喉を鳴らして飲み干せば、自然と私は笑顔になった。
沢山の人に愛されていた祖母。その場を共有している全員が悼んでいる、惜しんでいる、心から悲しみ、冥福を祈っている。
品のいい花輪、心のこもったお供え物。荘厳な読経。ひとりひとりがこの場にいることを本当に大切にして一丸となっている。
私は他人でも、家族でも、誰に対しても接するときは、心がどんなに苦しくても、身体がどんなに苦しくても、ほとんど必須事項のように笑みを浮かべるようにしている。
ばあちゃんが私の笑い方が好きだって言っていたから。そうして一人になった時、疲労によろめいて、いろんなことを考えたり、お風呂で温まってくるとぼろぼろ泣いている。自らの死を考える。
毎日、自分だけが生きている。最愛の拠り所を失って、それだけで私の中で悲しみが膨らんでいく。身体の奥底で、どうしようもない自分への嫌悪感がある。
大切なものを無くした世界で生きなくてはいけない? そんな馬鹿な話は無い。
けれど、私は怖がりだから。独りぼっちは怖いから。だから、皆が好きだと言ってくれた笑みを見せるようにして、皆から嫌われない様に。祖母はもういないから、味方を失わない様に。どんな時も笑って愛嬌を振りまくようにして。
「だけど、もう、疲れたよ」
祖母の遺骨を前にして、ぽつりと私は呟いた。遺骨を少しだけ手に取って、粉々にして。
人の力ではどうしてもできないことが、この世には沢山あるのだと。絶望という名の壁という形として目の前に現れて、初めて知った。いくら頑張っても砕けない壁なのだ。
私には何が出来た。何もできなかった。ただ、全てを見送って過ごす毎日だ。
何度も死のうと思った。死という存在が近くに存在するのだ。何かの選択肢を選ぶとき、必ず死という存在がある。今までは、その死を選択せず生きてきた。ただ、それだけだった。
人間、生きるのが自由なら死ぬことも自由だと思う。生きていたいと思う人が、生きればいいと思う。
死は眠りに過ぎない。それだけの事ではないだろうか。眠りに落ちれば、その瞬間、一切が消えてなくなる。胸を痛める憂いも、肉体に付きまとう数々の苦しみも。
「皆に愛されて大切にされていたばあちゃんが死んだのに、お前なんかが生き残るなんて許さないから」
もう一人の、まるで幼子のような自分が背後に立ち、私を指さして泣きながら怒号を浴びせる。
返せよ、私のばあちゃんを返してよ。そう何度も罵っているようだった。
分かっているよ。何度、そう返事をしただろう。
燃え落ちた笑顔、真珠の骨。繰り返し、繰り返し、私は何度も飽きることなく祖母の葬儀の夢を繰り返し見て、骨となった祖母を私のモノにしようとする。一つまみの欠片を摘まんで、そのまま飲み込む。
ごくん、と喉を鳴らして飲み干せば、自然と私は笑顔になった。