そんな世界を走っていく

「……宇都宮までついてきてくれるのか?」
 のそりと顔を上げて尋ねると、はるかは再びきょとんとした。
「ついて行っちゃダメなんですか?」
「いや。今宇都宮行くっつったら変な顔してたから」
 はるかはほっとしたように笑顔を見せた。
「急だなって思っただけです。しばらく笠間に留まるかと思っていたから」
「……そうか」
 拓巳はほうっと息をつく。
「少し寝る」
 そう宣言して、拓巳はシートに身を埋め目を閉じた。

 何かが、揺れている。
 拓巳は感じていた。
 これは夢なのか、現実で起こっていることなのか。
 目の前に、海が見える。徐々に海水が流れ込んできている街が。
 あれは、お台場?
 ーーあなたのせいですよ。
 頭に声が響いた。
 ぎくりとして拓巳は目を開けた。目が焦点を結ぶと、目の前には心配そうなはるかの顔があった。
「大丈夫ですか?」
 はるかが小首を傾げる。
「何がだ」
 尋ねるとはるかはさらに首を傾げた。
「ちょっとうなされてたみたいです」
「ああ……」
 拓巳は頭を振った。何か夢を見ていた気がする。
 隣のはるかが拓巳が買ってやったスマホを見た。
「そろそろお昼ですよ。どこか食べに行きましょ。どんなとこあるかなー」
 いそいそとはるかはスマホを操り始めた。拓巳はそれをぼんやりと眺めた。
 何かを思い出しそうな気がしていた。

「美味しかったですね」
 真新しい定食屋を出て車に再び乗り込む。拓巳は軽く頷いてスマホを開いた。
 ニュースは今朝の続報を伝えている。その関係で1年前同じように海に沈んでしまったお台場の今の姿も映し出されていた。今の姿と言っても、そこには海が広がっているだけなのだが。
 しかし次に流れたお台場があった場所の近くに見える建物の映像に、拓巳はどこか懐かしいものを覚えた。
 なんで懐かしいんだ?
 その答えが出ないまま、気づくとエンジンをかけていた。はるかはあたふたとシートベルトをした。
 何か、思い出せる気がする。
 しばらく走ると、はるかは不審そうな様子を見せた。
「さっきの公園に行くんじゃないんですか?」
 窓の外の流れる景色を見てからはるかが口を開く。
「ああ」
「ホテルこっちなんですか?」
「いや」