「つーか話変えよ!弟くん、絵上手らしいね。美月がすごい自慢しててさ。」
「言ってたね~ねぇ~何か描いてくれない~?」
「別にいいですよ…紙とペンはありますか?」
「シャーペンでいい?はい。」
「ありがとうございます。」

絵を描いて、と頼まれてしまったが、何を描こうか…

もう、暫く描かなすぎて、思い付かない……

「即興だし、何でもいいよ~」
「じゃあ…」
そう言った俺は、何となくで女性を描いてみた。

黒髪で優等生そうな女性…

誰よりも、人のために働けるような人…

「あれ~?この女の人、美月にすごく似てるね~」
「本当だ!この目元とか髪型とか似てる似てる!って、弟くん!大丈夫?!」
「えっ…」

大丈夫って言われて「?」がついてしまった。

頬に温かいものが流れている、気がする…

ちょっと触ってみると、湿っている…?

「えっ…俺……」
(泣いてんの……?)

義姉の訃報を聞いても、葬式をやっても…
涙一つ出なかったのに……

何で今更…出るんだろう…

いますぐにでも止めたいのに…全然止まらない。

むしろ、思えば思うほど、涙が出てくる。

「大…丈夫…です…ごめん…な…さい…」
「ううん、辛いよな。」
「いっぱい泣いていいからね~我慢しないでね~」
「は…い…うっ…うぅ…ぁっうっ…」
嗚咽混じりの泣き声は、俺の心にこびりつくように、残った。