春、俺は庭にある花々眺めながら、絵を描いていた。
義姉さんが、亡くなって数週間…まだまだ、暖かい気候が続いていた。
色とりどりを花達がその身を咲かせ、次の世代への準備をしていた。
「あっ!いたいた!誓くん!」
「芽李さん?どうしたんですか?」
「何してるのかな~って思って…お花描いてるの?」
「はい。能力こそ使ってませんが、運動等ができない分こうやって景色をみるのが楽しくて。」
「なるほど。」
あの一件以来少しずつ仲を深めていた俺たちは、最近は些細なことも話すようになっていて、互いが相談相手のような関係だった。
俺は、初めて会ったときから、ずっと「大好き」なのだか…
この気持ちを、彼女に言うつもりは更々ない。
「これ、義姉さんが好きだったやつですね。」
「これってオオイヌノフグリだよね?雑草の仲間じゃないっけ?」
「オオイヌノフグリっていうんですね。…この花は確かに雑草です。買わなくても勝手にはえてくる…しかし、どんな花よりも小さくて弱い花です。でも、そんな花の姿が義姉さんは、かっこいいって思ったらしいですよ。」
「この花を見て、可愛いじゃなくてかっこいい、か…なんか、お姉ちゃんらしいね。」
オオイヌノフグリ…
名前のわりに小さく弱いが、数少ない青い花…
俺は、オオイヌノフグリをいくつかそっと摘んで家に入り、義姉の仏壇の備えた。
(このままなら、これを見れるのも最後かな…)
俺は、そのまま部屋に戻り、一面にオオイヌノフグリが咲いている絵を描いた。
もちろん、色も塗った。