その後も、色々試してみたけれど、何一つとして成功しなかった。
「やっぱり、能力なんて嘘だったのかもしれません。俺の空耳かも…」
「そんなことないはずよ!多分…」
「もう少しやってみますか…」
そう言って、なにも考えずに林檎の絵を右人差し指で、すーっとなぞってみた。
すると、林檎はみるみる赤くなっていくではないか。
「「えっ…」」
「林檎が赤くなったわ!どうやったの?」
「えっ…俺はただ、絵をなぞっただけで。」
やって見せるように、左人差し指でなぞると、次はその林檎が現実に出てきたではないか。
「「えっ…!」」
「林檎が現実に…!ちゃんと重いし林檎の香りもする…」
「右と左で効果が違うようですね。…その林檎切ってみてください。」
「えぇ。」
フルーツナイフで林檎を切ってみると、果汁が出てきて香りが増した。
( 少しかじってみよう…)
「ん…!ちゃんと林檎の味がしますよ!」
「ほんと?!…美味しい!」
出てきた林檎は、食べられる「本物」の林檎のようだ。
この実験で分かったのは、三つ。
月からもらった「能力」は本物だということ。
描いた絵を「右人差し指」でなぞると、「俺の思った」色に染まるということ。
描いた絵を「左人差し指」でなぞると、描いた絵が現実に「本物」で、出てくるということ。