とわざとらしく出ない涙を絞り出そうとする。『放浪記』の林芙美子のように泣きたいときに思いっきり泣けたらどんなに幸せだろう。本能的に、男の人が女の涙に弱いということを知っている。だから、男の人を困らせようと思うと、ひとりでに涙が眼に溢れてくる。ダンスの時は、不満げに、レイモン・ラディゲの『ドルジェル伯の舞踏会』のドルジェル伯爵夫人のように、手を取られても知らん顔をしているけれど、音楽会の帰り道、東京文化会館の奥の葉陰で好きな人に手を握られると、一瞬、手を引き込めようとするけれど、本当は放してもらいたくない。ちょうど、ラファイエット夫人の『クレーヴの奥方』でヌムール公を遠ざけようとするが、いざ遠ざかってしまうと失意の涙にくれるクレーヴの奥方のように、女の心は裏腹。男の人の心理は丸見え。
相手が何も企んでいないと気落ちしたり、安堵したりする。そして、自分に魅力がないのかしらと首をかしげて鏡に見入る。相手が、強引に恋人にしようとすると、瞳をつぶって心を開く。そう、ちょうど、夏の野で、
「秋になるまで咲いていよう。秋になったら実を結ぼう」
とする花に似て、
「今こそ自分の美しさを、相手の瞳に映そう」
と、周囲の人々に媚を振り撒きたいたいと、そうやって、徐々に人生を充実させる。頬にキスされると、
「唇にも」
と、ひそかに祈る。そして、秋になる前に王様を探し出そうとする。だから時々妃を装う。でもやがて、それは王様のものになる。そして、望むと望まざるとにかかわらず、実を結び、種を宿し、次第にレディでなくなる。
そういえば、エリア・カザン監督の『草原の輝き』でディーン(ナタリー・ウッド)はウィリアム・ワーズワースの詩を朗読していた。
「草原の輝き 花の栄光 再びそれ還らずとも 嘆くなかれ その奥に秘めたる力を見出すべし」
そこで、条件反射の歌が生まれる。
「みなさん。イワン・ペトロヴィッチ・パヴロフをご存知ですか。そうです。わんこの条件反射でノーベル生理学・医学賞を貰った人です。僕はかつて彼の恋人に 恋をしたことがあったのです。彼女は僕に十分気があると思っていたのですが・・・」
君はまだまだ青い トマトの味さ
見ただけで唾を飲み込みそう
僕の目の前で顔が赧くならないかい
髪の形 洋服の色 肌の艶
君はそんな事ばかり気にしてる
相手が何も企んでいないと気落ちしたり、安堵したりする。そして、自分に魅力がないのかしらと首をかしげて鏡に見入る。相手が、強引に恋人にしようとすると、瞳をつぶって心を開く。そう、ちょうど、夏の野で、
「秋になるまで咲いていよう。秋になったら実を結ぼう」
とする花に似て、
「今こそ自分の美しさを、相手の瞳に映そう」
と、周囲の人々に媚を振り撒きたいたいと、そうやって、徐々に人生を充実させる。頬にキスされると、
「唇にも」
と、ひそかに祈る。そして、秋になる前に王様を探し出そうとする。だから時々妃を装う。でもやがて、それは王様のものになる。そして、望むと望まざるとにかかわらず、実を結び、種を宿し、次第にレディでなくなる。
そういえば、エリア・カザン監督の『草原の輝き』でディーン(ナタリー・ウッド)はウィリアム・ワーズワースの詩を朗読していた。
「草原の輝き 花の栄光 再びそれ還らずとも 嘆くなかれ その奥に秘めたる力を見出すべし」
そこで、条件反射の歌が生まれる。
「みなさん。イワン・ペトロヴィッチ・パヴロフをご存知ですか。そうです。わんこの条件反射でノーベル生理学・医学賞を貰った人です。僕はかつて彼の恋人に 恋をしたことがあったのです。彼女は僕に十分気があると思っていたのですが・・・」
君はまだまだ青い トマトの味さ
見ただけで唾を飲み込みそう
僕の目の前で顔が赧くならないかい
髪の形 洋服の色 肌の艶
君はそんな事ばかり気にしてる