煙を体に巻き付けて
   一人にしてよと吸いさしを
    窓の外へ投げ捨てる
   たった二年の別れだったのに
    それはあまりにも長すぎたのか
     Wohin die Liebe
     Wohin die Liebe
     愛は 愛は あの愛はいずこへ

 昼には体に一杯の
   滴に潮の香 漂わせ
    眩しかったあなたは
  星の夜 瞳を潤ませて
   星座の一つになりたいと
空を仰ぎ 涙した
   あの日 あの時 二人の回りで
   この世の全てが煌めいていた
    Wohin die Liebe
    Wohin die Liebe
   愛は 愛は あの愛はいずこへ
 
   Wohin die Liebe
    Wohin die Liebe
   愛は 愛は あの愛はいずこへ
    Wohin die Liebe
   ああ あの愛はいずこへ
    Wohin die Liebe
   ああ あの愛はいずこへ
    Wohin die Liebe
   ああ あの愛はいずこへ


九月三十日

 今日、名画座で『異邦人』を鑑賞。久保田早紀の『異邦人』はタイトルのパクリだ。
 誘ってくれた彼は、アルベール・カミュの作品をたくさん読んでいて、映画の終わった後、銀座の喫茶店「マロン」でわたしに、顧客に高い商品を売りつけようとするノルマを達成できない店員のように、アルベール・カミュについていろいろと説明してくれる。わたしが無知だということを知っているから、多少ハッタリがあるかもしれない。
 『裏と表』に描かれているアルベール・カミュの不幸な生い立ちや貧しい青春時代、レジスタンスでの暗躍、『異邦人』の大成功、不条理を説く『シーシュポスの神話』というエッセイ、『ペスト』に描かれる不条理のヒーロー、『誤解』という不条理劇、『レ・タン・モデルヌ』を舞台にしたジャン・ポール・サルトルとの論争での敗北、戦後史上最年少でのノーベル文学賞受賞(だからサルトルは後年、ノーベル文学賞を辞退した?)、そして、突然の不条理な交通事故死、『反抗的人間』に描かれた反抗的な生き方、離婚、などなど。
「死後名声の高まった、ゴッホやゴーギャン、宮沢賢治や石川啄木、挫折の中で人生を終えた芸術家が好きだ」
と彼は言う。