十八年前。遂に実行されてしまった、人間が人間を創るという行為。
 これはまさしく、神への冒涜。そして背徳であると、僕は思う。
 倫理や道徳なんて、とっくに失われた世界だけど。これだけは超えてはいけない一線だった。

 古今東西からかき集められ、秘密裏に保管されていた、特に優れた知能を持つ人間たちの遺伝子は、人の手により受精卵となり人工子宮へと託された。
 そしてそれらは、十七年前に三十余の新しい命として誕生する。
 彼らは皆、他の者と比べてずば抜けて知能指数が高かったこともあり、この政策は世界的に受け入れられた。

 そんな、両親を持たない新たな生命を、人々はアベルの愛し子と呼んでいる。