毎日、あたたかい布団で目が覚めて、目元にかかる日差しが少し鬱陶しくて。だけど、その日々が愛おしかった。
腐っていないおいしい食事に、あたたかい部屋。かわいいと、すきだと、撫でてくれる優しい手。
わたしも、彼のことが大好き。
野生で暮らしてきたわたしにはもういまからでは治らない病気があって、わたしはなんとなくずっとそれを知っていたけれど、病院でそう言われたときの彼の表情はいまでも覚えている。
わたしは長くは生きられない。
そう告げられたときの彼は、泣いていた。
それでも、できるだけ一緒にいられるようにと、彼は毎日かいがいしくわたしに尽くしてくれていた。それがどれだけ嬉しかったか。……苦しかったか。
伝えることはできないけれど。
だって、わたしは『猫』だから。
彼になにかを伝えたくても、できるのは寄り添うこととただ鳴くことだけだから。
せめてさいごに悲しませないように、死ぬとこなんか見せたくなくて、離れたんだよ。
……それなのに、どうして?