「友だちのところにわざわざ断りに行ってから、私を追いかけてくれたんですか?」
「そう、って言ったら一緒に帰ってくれる?」
いたずらっぽく笑う先輩の姿に、私も自然と笑みがこぼれて。
「帰ってあげません。先輩の魔法、中毒性があるからこれ以上は困る」
「どういうことだよ。ひどいな」
「先輩と一緒に帰りたいってことです」
自分でも何を言ってるのかわからない。なんだか照れくさくなって、「早く帰りましょ」とイヤホンを鞄にしまう。
「……可愛いかよ」
その間に先輩が小声でそんなことを呟いていたなんて、思いもせず。
「え? なんか言いました?」
「ううん、なんでもない。だれか知り合いにふたりでいるところ見つかったら、変な噂立っても困るし、昇降口を出たら待ち合わせよう」
先輩の提案に頷いて、じゃああとで、と別れようとしたときだった。
「お、いたいた、天野!」
妙にでかい声で呼ばれて振り向くと、近くの階段を担任が登ってきたところだった。
「これ、配布物。結構大事な書類だけど、ホームルームで渡しそびれてたから」
「それ先生が忘れてただけでしょ」
「あ、バレた?」
あはは、と誤魔化す担任の手から数枚の紙を受け取っておく。
色々と適当な石橋先生だけど、歳も若く話しやすいし、クラスで浮いてる私にも対等に接してくれるからありがたい。
「……へえ、ここふたりが付き合ってるのはあまりにも予想外だったな」
私と優先輩を順番に見ながら、ニヤニヤする先生。
反射的に先輩の方を見ると、パッと目が合って思わずそらす。
慌てたように「付き合ってません!」と訂正する先輩を横目に、なぜか顔が赤くなるのを感じた。
心臓の音がドクンドクン、と早鐘を打っている。
……なんだろう、この感覚。
「いいなぁ、青春」
先生は最後までその笑みを崩さず、先輩に「そのうちまた顔出せよ」とだけ言って、去っていった。
それを見送った後、ふと首をかしげる。
「……顔出す?」
「ああ、俺、元々サッカー部入ってたから。石橋先生が顧問だったんだ」
部活、入ってたんだ……。
先輩のことをひとつ知るたびに、なんだか嬉しくなる。
もっと知りたい、とも思う。
今度こそ先輩と別れたあと、サッカーをしてる先輩の姿を思い浮かべていた、なんて誰にも言えない。
「そう、って言ったら一緒に帰ってくれる?」
いたずらっぽく笑う先輩の姿に、私も自然と笑みがこぼれて。
「帰ってあげません。先輩の魔法、中毒性があるからこれ以上は困る」
「どういうことだよ。ひどいな」
「先輩と一緒に帰りたいってことです」
自分でも何を言ってるのかわからない。なんだか照れくさくなって、「早く帰りましょ」とイヤホンを鞄にしまう。
「……可愛いかよ」
その間に先輩が小声でそんなことを呟いていたなんて、思いもせず。
「え? なんか言いました?」
「ううん、なんでもない。だれか知り合いにふたりでいるところ見つかったら、変な噂立っても困るし、昇降口を出たら待ち合わせよう」
先輩の提案に頷いて、じゃああとで、と別れようとしたときだった。
「お、いたいた、天野!」
妙にでかい声で呼ばれて振り向くと、近くの階段を担任が登ってきたところだった。
「これ、配布物。結構大事な書類だけど、ホームルームで渡しそびれてたから」
「それ先生が忘れてただけでしょ」
「あ、バレた?」
あはは、と誤魔化す担任の手から数枚の紙を受け取っておく。
色々と適当な石橋先生だけど、歳も若く話しやすいし、クラスで浮いてる私にも対等に接してくれるからありがたい。
「……へえ、ここふたりが付き合ってるのはあまりにも予想外だったな」
私と優先輩を順番に見ながら、ニヤニヤする先生。
反射的に先輩の方を見ると、パッと目が合って思わずそらす。
慌てたように「付き合ってません!」と訂正する先輩を横目に、なぜか顔が赤くなるのを感じた。
心臓の音がドクンドクン、と早鐘を打っている。
……なんだろう、この感覚。
「いいなぁ、青春」
先生は最後までその笑みを崩さず、先輩に「そのうちまた顔出せよ」とだけ言って、去っていった。
それを見送った後、ふと首をかしげる。
「……顔出す?」
「ああ、俺、元々サッカー部入ってたから。石橋先生が顧問だったんだ」
部活、入ってたんだ……。
先輩のことをひとつ知るたびに、なんだか嬉しくなる。
もっと知りたい、とも思う。
今度こそ先輩と別れたあと、サッカーをしてる先輩の姿を思い浮かべていた、なんて誰にも言えない。