「そんなの、嫌がるどころか、可愛いしかないじゃん」
続けて耳に届いた言葉にドクンと胸が騒いで、身体の熱が一気に上がる。
「あ、え、っと……」
時瀬くんの言葉には、ときどき爆弾級の破壊力が込められている。
反応に困って落とした視線を地面に彷徨わせていると、時瀬くんがぎゅっとわたしの手を握りしめてきた。
全身でドキンと鼓動を打って飛び上がると、時瀬くんがふっと息を吐くように笑う。
「ねえ。おれがさっき言おうと思ったこと、聞いてくれる?」
「うん……」
頬を火照らせて頷くと、時瀬くんを包む空気がふわっと揺れた。
「名前、柚乃って呼んでいい?」
そう言って首を傾げた時瀬くんの耳が、ほんの少し赤くなっているのがわかった。繋いだ手のひらから、絡めた指先から、震えと緊張が伝わってくる。