「繋いでいい?」

 もう既に、わたしの右手のほとんどを包み込んでしまっているくせに。わざわざ事後報告してくる少し掠れた甘い声にドキドキして、わたしはバカみたいに何度も小さく頷いてしまう。

 絡まる指やくっつき合う手のひらから、時瀬くんの熱が伝わってきて、頬や首筋がじわじわ熱くなる。

 ほんの少し歩調が速くなった時瀬くんに手を引かれるようにして歩きながら、わたしの心臓は呼吸を忘れそうなくらいにドキドキと高鳴っていた。

 ときどき金色に透ける時瀬くんの明るい髪を見つめながら、わたしが胸を高鳴らせているこの瞬間に、彼はどんな顔をしているんだろうと、ふと思う。

 女の子と手を繋いで歩くくらい平気かな。それとも、わたしの何分の一かくらいは、このシチュエーションにドキドキしてくれているかな。

 そうだったら嬉しいし、できれば彼がわたしを意識してくれている顔が見たいと思う。

 それだけじゃなくて、最近のわたしは、時瀬くんがどんな顔で話しかけてくれているのか。拗ねたり、不貞腐れた声を出すときの彼が、どんな表情をしているのか。彼がどんなふうに笑いかけてくれているのか。

 時瀬くんが見せるひとつひとつの表情を知りたいと思う瞬間がある。