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 駅前のマックでポテトと飲み物を頼んで二時間ほどおしゃべりしたあと、わたし達は席を立った。


「行こっか」

 店を出ると、時瀬くんがわたしと並んで同じ方向に歩き始める。

 わたしの家は高校まで徒歩通学だけの、時瀬くんは電車通学。マックの前で別れて駅に向かったほうがラクなのに、時瀬くんはいつも当たり前みたいに、わたしのことを家まで送ってくれる。


「わたしの家まで来て、また駅まで引き返すのって大変じゃない?」

 背の高い時瀬くんを見上げて訊ねると、彼がわたしのほうを振り向く。


「おれがもうちょっと榊と一緒にいたいからいいんだよ」

 すぐに少し拗ねたような声が落ちてきて。時瀬くんらしい応答に、胸がきゅっと狭まった。

 うつむくと、時瀬くんが左手首につけた青色のブレスレットが目に映る。それを見つめて頬を緩ませていると、時瀬くんの左腕がわたしの右腕にぶつかるように軽く触れてきた。

 ドキッと胸を揺らしたのもつかの間、さりげない動きで時瀬くんの左手がわたしの右手に重なる。