君だけのアオイロ


 なっちゃんとの一件があってから、わたしは人と話すときに、その人の覚えやすい特徴を意識して探すようになった。

 担任の先生や部活の顧問、部活で関わる先輩など。間違えたら失礼にあたる人の特徴は、特に意識して探した。

 話し方、口癖、声の高低、仕草のクセ。相手の髪型や服装が変わっても変わらないところを注意深く見るようになった。

 それでも失敗するときはあったし、上手くいかないときもあったけど……。顔が識別できないことを自覚していなかった頃よりは、人間関係が円滑になった気がした。

 わたしの見え方が他の人と違うことは、学校では公にしていない。

 最近まで、わたしの事情を知っているのは、中三のときに仲良くなって同じ高校に進学した江藤(えとう) 陽菜(ひな)だけだった。

 だけど今は、時瀬くんもわたしの事情を知っている。

 人の顔を区別できないわたしは、何か目印がなければ時瀬くんを認識することができないのに。彼は、そんなわたしの事情を知ったうえで、わたしのことが好きだと言う。