マックで席取りをしてくれているなっちゃんのことを探し回ったときも、アパレルショップでなっちゃんのことを見失ったときも、試着したなっちゃんに似合うかどうか感想を求められたときも……。わたしは、学校で会うときとは髪型も服装も違うなっちゃんの顔がよくわからなかったのだ。

「なっちゃん、わたし……」

「バイバイ、柚乃ちゃん」

 首を傾げたなっちゃんが、顔の横で小さく手を振る。なっちゃんの顔には空洞みたいな暗い目がふたつあるだけで。その表情は、はっきりと読み取れなかった。

 それ以来、なっちゃんは教室でわたしに話しかけてこなくなった。

 嫌な思いをさせたことをちゃんと謝りたかったけれど、わたしは教室の中にいる女の子たちの中から、なっちゃんをうまく特定することができなかった。

 ストレートの黒髪をおろしていて、手足が細い、なっちゃんと似たような背格好の女の子はクラスに何人かいる。これまでわたしがなっちゃんのことを認識できていたのは、いつも彼女のほうから話しかけてくれていたからだ。

 その事実に気付いて驚愕した。

 わたしは今まで友達の……、なっちゃんの何を知っていたんだろう。