「ごめん、わたし……」

 具体的に何をどう謝ればいいのかわからなかったけど、それでも自分の態度がなっちゃんを嫌な気分にさせたんだということはわかった。何か言わなければと言葉を探していると、なっちゃんの眉尻がキュッと下がる。

「わたしは今日柚乃ちゃんと遊ぶのすごく楽しみにしてたんだけど……。無理に付き合わせてたなら、ごめん」

 なっちゃんの少し掠れた声が耳に届く。その声がひどく切なく悲しそうだと思ってハッとした。

 自分が、網膜が捉えたハの字に下がった眉と掠れた声のトーンだけでなっちゃんの気持ちを推し測ろうとしているという事実に、ふと気が付いたのだ。

 わたしは目の前にいるなっちゃんのことを「なっちゃん」として認識しているつもりなのに、よく見ようとすればするほど、彼女の顔の全体像がうまく捉えられない。

 あれ? なっちゃんて、どんな顔してるんだったっけ――?

 瞬間、サーッと体から血が引いて、今日一日で自分が犯した失敗のワケに思い当たった。