行きの電車では目的地に着くまでずっとおしゃべりしていたなっちゃんが、帰りの電車ではほとんどわたしに話しかけてきてくれなかった。

 地元の駅の改札を出ても黙っているなっちゃんに「じゃあ、ね」と遠慮がちに声をかけたら、なっちゃんがわたしのほうを見た。丸いふたつの目が、出口のない暗い空洞みたいに思えてドキッとする。


「柚乃ちゃん、今日、わたしと遊ぶの、あんまり乗り気じゃなかった?」

「そんなことないよ……!」

「でも、楽しくなかったんだよね?」

「そんなことないよ……」

「ほんとうに?」

 問いかけてくるなっちゃんの声のトーンが、いつもより低い。怒っているのとも、呆れているのとも違う。とても悲しそうな声だった。

 なっちゃんに問い詰められる度、わたしの胸は不穏にざわめいて、少しずつ鼓動が速くなっていく。