約束の土曜日。わたしとなっちゃんは、まず、待ち合わせした地元の駅でうまく落ち合えなかった。
約束の時間ピッタリに駅の改札前に到着して、切符売り場の前にいた女の子に「おはよう、なっちゃん」と声をかけたら、人違いだった。
声をかけた女の子は、学校でいつも見ているなっちゃんのようにストレートの黒髪を肩までおろしていて、背格好や細長い手足までなっちゃんそっくりだったのに。その子に「たぶん間違えてますよ」と、怪訝な声で言われてびっくりした。
その子の背格好はなっちゃんにそっくりだったけれど、声はなっちゃんよりも少し低かった。
「柚乃ちゃん、何やってるの?」
切符売り場の前で固まっていると、誰かが後ろからわたしの肩をポンッと叩く。
声をかけてきた女の子は、今度こそ本物のなっちゃんだった。
「ごめん。なんか、人違いしちゃって……」
頬を引きつらせながら謝ると、なっちゃんは「あはは」と楽しそうな笑い声をあげた。