「実はね、うちのおじいちゃんが水彩画が趣味で、よく風景の絵を描いてたの。二年前に病気で死んじゃったんだけど、柚乃ちゃんの絵を見てるとおじいちゃんが描いてた絵を思い出すんだ」

「それで、話しかけてきてくれたの?」

「それもあるけど……。それだけじゃなくてね、ちょっと最近、今のグループの子たちとの付き合いに疲れてて。柚乃ちゃんの絵を見ると、なんか癒される」

 市のコンクールで入賞したのは、たぶんまぐれだ。

 とりたててうまいとも思わないわたしの絵を見て癒されるなんて。なっちゃんの言葉になんだか照れてしまう。

「あ、りがとう……」

 うつむいて照れ笑いすると、机に肘をついてわたしを見ていたなっちゃんの空気が、ふわっと柔らかくなった。

「ねえ、柚乃ちゃん。今度一緒に遊びに行こうよ」

「遊びに?」

「うん。電車乗って、買い物とか」

「買い物……」

 なっちゃんからの思いがけない誘いに、胸がドキドキした。

 小さな頃から友達が少なかったわたしは、学校外で誰かと遊んだ経験がほとんどない。もちろん、友達と一緒に電車に乗って買い物に行ったことなんてあるはずもなかった。

「今週の土曜日、空いてる?」

「うん、空いてる」

 なっちゃんに予定を聞かれて、わたしは迷わず頷いた。だけど、これが失敗だったのだ。