「榊さん、絵がうまいんだね」
声をかけてきたのは、夏木さんという女の子だった。
名字の夏木から「なっちゃん」というあだ名で呼ばれていて、わたしみたいにおとなしい子よりもクラスの中心グループいる女子達と仲良くしているような子だった。そんななっちゃんが、どういう気まぐれか、市のコンクールで入賞したわたしの絵に興味を持ったらしい。
わたしが教室で絵を描いていると、なっちゃんは仲良しグループの輪から抜け出してきて、わたしの絵を見にきた。
最初は絵を描いているときにだけ話しかけてきていたなっちゃんは、そのうち休み時間の度にわたしの席に近付いてくるようになり、いつのまにかわたしのことを「柚乃ちゃん」と呼ぶようになった。
初めは、わざわざ仲良しグループの輪を抜け出してまで声をかけてくるなっちゃんのことを不思議に思っていたけれど、毎日のように話しかけられているうちに、彼女の存在感はわたしの中で少しずつ大きくなっていった。
なっちゃんと話すのは楽しかったし、彼女はいつでも無条件にわたしの絵を褒めてくれるから嬉しかった。