それでも、小学校の高学年くらいになると、わたしは自分なりに人間関係を作れるようになっていった。
友達の顔を覚えるのは相変わらず苦手だったけれど、話しかけてきてくれた子の名前がわからないときでも、とりあえずまずは笑顔で言葉を返せばいいんだと気付いて。しばらく相手に話を合わせるようにした。『無視した』とだけは言われないように、頑張って気を付けた。
そうしていたら、低学年の頃のように悪口を言われることも減り、少数だけど学校内で一緒に行動する友達ができた。
中学に入ってからは、特に深く考えることもなく美術部に入った。
基本的には、部員それぞれが好きなテーマで好きな絵を描いて過ごせるゆるめの部活だったのだけど。中学二年のときに、顧問の先生が「市のコンクールに絵を出してみよう」と、美術部員全員に課題を出してきた。
顧問の先生が急にそんなことを言い出したのには、職員会議で立場が上の先生から「目的や目標を具体的に設定して部活の指導を行っていくように」と指示された背景があったらしく。わたし達美術部員は二ヶ月ほど、市のコンクールに向けた絵を描かされた。
コンクールのテーマは「わたしが描く未来の街」だったと思う。
自分の意志で出すコンテストではないし、わたしは気楽な気持ちで街の絵を描いた。
ガラス張りの高層マンション、カラフルな壁のショッピングモール、空中に浮かぶ緑溢れる公園。なんとなく近未来を思わせるような建物や施設をいくつか描いて、それらに自由に行き来できるような曲がりくねった迷路みたいな道路もつけた。背景には、スカイブルーの絵の具を一色だけでざざっと塗った。
特にこだわりもなく描いた絵だったのに、なぜかわたしの作品はコンクールの中学生の部で佳作に選ばれて学校新聞に掲載された。それがキッカケで、休み時間中に絵を描いていると、あまり話したこともないクラスメートに突然声をかけられた。