ブレスレットを買った店が入っているショッピングモールをぶらぶら見て回ったあと、おれたちは同じビルの中にある展望広場のベンチで休憩した。

 買ってからずっとズボンのポケットに入れっぱなしていたブレスレットを取り出すと、榊がおれの手元をじっと見てきた。

「それ、二個とも青でよかったの? あくまで、わたしの個人的意見だったのに」

 こちらの思惑など知らない榊は、おれが青系のブレスレットを二本選んだことを少し気にしているらしい。

「榊の好みのほうがいいんだよ」

 ぼそりとつぶやくと、おれは購入したブレスレットのうち濃い青色のほうを自分の左手首に付けた。

「これ、今日からおれの目印ね。ずっと付けとくから。髪切っても、夏服でも冬服でも、これは絶対に変わらない目印だから。おれのこと、ちゃんと見分けて」

 手首が見えるように顔の前まで上げて笑いかけると、榊が「え?」と間抜けに口を開いた。

 母親譲りの地毛の明るい茶髪と、人に睨んでると誤解されがちな目力強めのつり目。自分の容姿なんて、悪目立ちして誤解されるばかりで少しも良いところがない。そう思っていたのに、榊には、おれと他の人間との区別がつかない。

 彼女にとっては、おれも他人もみんな同じようにしか見えていなくて。一度人混みに紛れてしまえば、見つけてすらもらえない。

 だけど、それでは嫌だと思った。