「そういえばさ、学校ではおれのことをどうやって認識してくれてんの?」

 今日の赤いスニーカーは目立つけど、おれは学校中で特徴のあるものは身に付けていない。

 うちの高校は、男子は規定服の黒ズボン、女子は規定服の紺のスカートを身につけていれば、上に着るトレーナーとかカーディガンやセーターは色も種類も自由だ。とはいえ、みんな似たり寄ったり。

 不思議に思って訊ねたら、榊がおれの頭に視線を向けた。

「時瀬くんだって判断する基準は、髪の色と前髪の流し方」

「髪色はわかるけど、前髪?」

「今日は真ん中で分けてていつもと違うけど、学校ではおろしてちょっと斜めにワックスで流してるでしょ」

「ああ、そうだわ。てことは、前髪変わると区別付きにくい?」

「学校だったら、ちょっと迷っちゃうかもしれない……」

 榊が肩を竦めて苦笑いする。それを見て、おれは慌てて額の上で前髪をぐしゃぐしゃ撫でて、いつもどおりに見えるようにした。

「でも、うちの学校って茶髪のやつ結構いるじゃん。髪型だけでおれってわかるの?」

「髪型は時瀬くんって判断する要素のひとつだよ。それ以外にも、見てるところがある」

「なに?」

「隣に立ったときの身長差とか、ハキハキした迷いのない話し方とか……、あとは、上履きの踵」

「上履き?」

 怪訝に眉を寄せながら訊ねると、榊がふふっと笑う。