悪目立ちして誤解されることには慣れているけど、それでもやっぱり、やってもいないことをやったと思われるのは悲しい。

 吉原先生が呑気なのか、単に説教するのが面倒なのかはわからないけれど、疑われなくてよかった。ほっとして、返された消しゴムをぎゅっと握り込む。

 そのとき、吉原先生が椅子から立ち上がりながら「あ、そうだ」と何か思い出しだようにつぶやいた。


「もし時間があるなら、時瀬くんにひとつお願いがあるんだけど……」

「はい……?」

 カンニング容疑が晴れて気が緩んでいたおれは、穏やかに笑いかけてくる吉原先生の言葉に、つい頷いてしまった。