「あ、今、ひとつやってるやつある」
スマホを寄せて見せると、榊が映画のタイトルを読んで微妙に顔を引き攣らせた。
「ごめん、やっぱりホラーはなしで。アクション系のほうがいいかも……」
「いいけど。見たいジャンルじゃなかった?」
「あ、うん……」
モジモジと何か言いたげにしている榊を変だな、と思っていると、彼女が「ごめんなさい……」と謝ってくる。
「ホラーが得意なわけじゃなくて、映画を見るなら、ストーリーがわかりやすそうなもののほうがいいかなって思ったの。わたし、出てる俳優さんとか女優さんの顔がよくわからないから、複雑な恋愛系とかサスペンス系の映画だと、誰が誰だがわかんなくなっちゃうんだ……」
「ああ、そっか。じゃあ、映画見ても楽しくねーよな」
「ごめん……、面倒くさいよね」
顔をうつむけた榊が、恐縮そうに謝ってくる。
なんだか今日は、会ってからずっと榊に謝られてばかりだ。せっかく一緒にいるのに申し訳ながられてばかりなのは違う気がする。



