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「榊はどこか行きたいところある?」
スタバを出てから訊ねると、榊は「うーん」と首を傾げた。
「今日はボウリングだと思ってたから、行きたいところは特に考えてなかったな」
「だったら、ボウリング行く?」
提案すると、榊が少し微妙な顔をした。
「もし行き先を選べるなら、ボウリング以外の場所がいいかな。実は、あんまり得意じゃない」
「あー、わかる。なんか、ガーター連発してそう」
「否定はできないけど……」
ボウリングの球を重たそうに抱えて不器用にレーンに落とす榊の姿を想像してククッと笑うと、彼女がむっと頬を膨らませる。その横顔が可愛くて、おれはひとりで吹き出してしまった。
「じゃあ、映画でも見る? 今、何やってんだろ」
何気なくそう言ってスマホで上映映画を調べようとすると、おれのほうに一歩近寄った榊が横から手元を覗き込んできた。
「映画見るなら、アクションとかホラーとかがいいな」
「榊、ホラー好きなの? 今なんか怖いやつやってんのかな」
意外に思いつつ、スマホの画面をスクロールして上映中のホラー映画を探す。
おれの勝手なイメージでは、榊はホラー映画よりも邦画の恋愛系を好んで見てそうだけど。好みって見かけによらないよな。



