君だけのアオイロ


◇◇◇

「榊はどこか行きたいところある?」

 スタバを出てから訊ねると、榊は「うーん」と首を傾げた。


「今日はボウリングだと思ってたから、行きたいところは特に考えてなかったな」

「だったら、ボウリング行く?」

 提案すると、榊が少し微妙な顔をした。

「もし行き先を選べるなら、ボウリング以外の場所がいいかな。実は、あんまり得意じゃない」

「あー、わかる。なんか、ガーター連発してそう」

「否定はできないけど……」

 ボウリングの球を重たそうに抱えて不器用にレーンに落とす榊の姿を想像してククッと笑うと、彼女がむっと頬を膨らませる。その横顔が可愛くて、おれはひとりで吹き出してしまった。

「じゃあ、映画でも見る? 今、何やってんだろ」

 何気なくそう言ってスマホで上映映画を調べようとすると、おれのほうに一歩近寄った榊が横から手元を覗き込んできた。

「映画見るなら、アクションとかホラーとかがいいな」

「榊、ホラー好きなの? 今なんか怖いやつやってんのかな」

 意外に思いつつ、スマホの画面をスクロールして上映中のホラー映画を探す。

 おれの勝手なイメージでは、榊はホラー映画よりも邦画の恋愛系を好んで見てそうだけど。好みって見かけによらないよな。