君だけのアオイロ


「それ、飲み終わったら行く?」

 榊の手元を指差すと、「あ、うん」と頷いた榊が、慌てたようにフラペチーノの残りを啜る。

「焦んなくていいよ」

 必死にカップの残りを飲み干そうとしている榊を見て、ふっと笑うと、彼女がストローから口を離して首を横に振った。

「ううん、もう残して行こうかな。わたしのせいで、待ち合わせ時間に大遅刻だもんね。早く合流しないと……」

「いいよ、もう武下たちとは合流しなくて」

 飲み残しのプラカップを持って席を立とうとする榊の手首をつかむと、彼女が「え?」と不思議そうにまばたきをした。

 榊は、学校で約束をしたときから今この瞬間までずっと、自分がグループデートの人数合わせで誘われたと思ってる。

 それを純粋に信じてくれている榊には悪いけど、おれはもう、武下たちとの約束なんてどうでもよくなっていた。

 どうせ武下たちだって、おれと榊の合流を期待していない。

 スタバに入る前に、トラブルで榊とふたりでいることを武下と西沢にラインしたら「そのまま、ふたりでごゆっくり〜」というメッセージが入ってきていた。