君だけのアオイロ


「おれは別に迷惑なんて思ってないよ。今日のことも、文化祭のときのことも」

 おれがそう言うと、視線をあげた榊がわずかに目を細めた。

「時瀬くんて、優しいよね」

「は?」

 優しいなんて、言われ慣れてないから、榊の言葉にちょっと焦った。榊がおれのどこをどう見てそんなふうに思ったのかはわからないけど、耳の奥がこそばゆい。

「榊って、やっぱりちょっと変だよな」

 照れ隠しに前髪を触りながらボソッとつぶやくと、榊が不安そうに眉尻を下げた。

「ごめん。今わたしが話したこと、変だったよね……」

 おれのひとりごとを誤解しているらしい榊に、慌てて首を横に振る。

「いや、そうじゃなくて。変だって思ったのは、榊の感覚。おれのこと『優しい』なんて評価するの、榊くらいだよ。基本的に、睨んでるみたいで怖いとか、態度が悪いとか生意気だとか、見た目で評価されがちだから」

「その人たちは、顔の区別がつくのに見る目がないんだね」

 ふっと息を吐くように笑ったおれの声に、唇を尖らせた榊の不服そうな声が混ざる。瞬間、胸の奥がぎゅっと詰まった。

 やっぱり、榊はちょっと変だ。

 眉根を寄せて黙り込むと、榊が急におろおろとする。