道端でぼろぼろと泣いた榊は、おれと他の男との区別がつかないと言っていた。

 座れる場所を探しながらあちこち歩き回っているあいだ、それがどういうことなのか考えていたけれど、どれだけ考えてみてもやっぱりよくわからない。

 事情があるなら聞くと言って、ここまで移動してきたけど……。時間が経ってお互いに冷静になっている今、榊が泣いた理由をあらためて訊き直すべきか迷う。

 プラカップの中で溶けていく氷を転がしながら、どうしたものかと思っていると「時瀬くん」と、榊が遠慮がちに呼びかけてきた。

「さっきは、取り乱してしまってごめんなさい。わたしのせいで、グループデートの約束、台無しにしちゃったよね。あとで、みんなと合流したら、ちゃんと謝ります……」

 申し訳なさそうに肩を窄ませた榊が、おれに向かって頭を下げる。

「そんなの、別にいいよ。ていうか、そんなふうに謝られたら、おれが悪いことしてるみたいに見えるからやめて」

「どうして?」

「おれ、目付き悪いし、よく他人から柄悪そうにみられがちなんだよ。さっき榊が大泣きしてたときだって、通りすがりの人たちに『不良がおとなしそうな女の子を泣かせてる』って目で見られてただろ」

 プラカップをぐるぐる回しながらため息を吐くと、榊が視線をあげてパチパチとまばたきをした。