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街中を歩き回ったおれたちは、駅から少し離れた場所にあるオフィスビルのあいだにあるスタバに入った。
そこに入るまでに立ち寄った駅近のコーヒーショップやファーストフードは、どこも満席だったのだ。
たいした会話もせずにスタバの入口に近い席に向かい合って座ったおれと榊は、お互いに無言で、アイスラテとキャラメルフラペチーノを啜っている。
おれが飲んでいるアイスラテはシロップなしでそのまま飲むのでもミルクの甘味が充分すぎるくらいなのに、榊が飲んでいるクリームがたっぷりのったあれは、どれほど甘いのだろう。フラペチーノをストローで吸い上げていく榊の口元をじっと見ていると、彼女がちらっと視線をあげた。
「え、っと。ちょっと飲む?」
榊が、戸惑い気味にフラペチーノのカップをおれのほうに突き出してくる。席に座ってからの榊の第一声がそれだったから、少し焦った。
榊の飲み物を物欲しそうに見てると思われたんだとしたら気まずいし。だいいち、そんなに仲良いわけでもなくて、さっき人前で大泣きさせたような女子と、ストローで間接チューなんてできるわけない。
「あー、いや。違う。すげー甘そうだなって思っただけ」
「そっか……」
会話が途切れ、また沈黙。