「時瀬、くん?」

「そうだけど!」

 おれのほうを向いた榊に確認するように語尾上がりに名前を呼ばれて、我慢できずに苛立ちが声に出た。

 なんなんだ、いつもいつもこいつは。

「そいつらは? 榊の知り合い?」

「あ、えっと……。間違えたみたい……」

「は?」

 不機嫌に眉根が寄って、榊の腕をつかむ手にグッと力が入る。

 間違えたって、何を? 

「ごめんなさい……。わたし、赤が目印だってことばっかりで……」

 榊が何か言っているけど、まったく意味わからない。

 じろっと見下ろすように睨むと、榊はおれから視線をそらして、おどおどとしていた。

「なんだ、ツレいたのか。残念」

 話していると、榊を連れて行こうとしていたふたり組の男のうちのひとりが、おれたちを横目に、ふっと鼻で笑った。