階段横のエスカレーターに乗って下を覗くと、液晶モニターの前あたりに榊の姿を見つけた。

 白のブラウスにベージュのショートパンツを着ている彼女は、紺の学生服を着ているときと違って爽やかで涼し気だ。

 待ち合わせの時間まではまだ五分以上もあるのに、肩からかけたショルダーバッグに手をかけてそわそわ落ち着きなく立っている。

 きっともうずいぶんと前からそこに待っているんだろう。人目があるのも忘れて、ふっと機嫌の良い笑みがこぼれる。

 手すりから離れると、おれはエスカレーターに乗って立ち止まっている人たちの横をすり抜けて、一気に下まで駆け下りた。

 液晶モニターの前で、行きかう人たちの足元にばかり視線を落としている榊は、まだおれの存在に気付いていない。

 顔さえあげてくれれば確実に視界に入る距離なのに。少しもどかしい気持ちで榊に歩み寄ろうとすると、彼女の前にふたり組の男が立った。

 髪の色は明るめの茶髪で、後ろから見ると背格好は、ふたりとも俺と同じくらい。だけど、そいつらは武下でも西沢でもない。

 ふたり組に話しかけられた榊は、顔をあげて何か言葉を返しているみたいだった。