「土曜日のこと、榊が気が進まなければ断っていいよ。武下にはおれから話すし」

「ううん、大丈夫だよ。だけどわたし、今まで人数合わせでもグループデートみたいなのに誘われたことないから。うまくできなかったらごめんね」

 榊が首を傾げて笑いかけてくる。

「あー、うん……」

 榊は人数合わせだから仕方なくおれに付き合ってくれるんだよな。だとしたら、それはそれで少し複雑かもしれない。結局おれは、榊がどんな反応をしても複雑な気持ちになるんだな……。

 苦笑いを浮かべると、先に教室の外に出ていた武下と西沢に、廊下から「蒼生ー」と呼ばれた。


「呼ばれてるから、おれも行くわ」

「時瀬くん、ちょっと待って」

 武下たちを追いかけようとしたら、榊がおれを呼び止める。

「土曜日に遊ぶなら、連絡先を教えておいてほしい」

「あー、うん……」

 カバンからスマホを出す榊に、胸がそわそわとした。

 土曜日の待ち合わせを口実に、タイミングを見計らっておれから連絡先交換しようと思っていたけど。まさか、榊のほうから先に切り出してくるとは思わなかった。

 単純だけど、それだけのことでちょっとテンションが上がる。