「蒼生ー、今日は武下にマックおごったほうがいいんじゃない」 

 武下の気まぐれというか、切り替えの早さに慣れている西沢は、楽しそうにケラケラ笑っていて。からかい口調でおれにそんなことを言いながら武下に着いて行く。

「はぁ? なんで」

 土曜日のグループデートの予定を勝手に決めて、榊のことだってほぼ無理やり巻き込んだくせに。奢らされる意味がわからない。

「なんか、ごめん」

 武下と西沢の背中にため息を吐きながら謝ると、榊が首を横に振った。

「時瀬くんの友達、勢いすごくて台風みたいだね。土曜日、ちょっと不安だけど……。時瀬くんに迷惑がかからないように気をつけるね」

 抱きかかえたカバンに顔を埋めるようにして、榊がふふっと笑う。

 笑顔を見せているわりに、榊の言葉はなんだか意味深で。不安だとか、迷惑かからないようにという彼女の言葉が妙に耳に引っかかった。