「実はね、榊さん。土曜日は、ただみんなで遊ぶってわけじゃなくて、俺も西沢もカノジョを連れてきてグループデートしようってことになってんの。なのに、蒼生だけカノジョいないから、このままだと余っちゃうんだよね。だからそれもあって、榊さんに付き合ってほしいなーって思ってるんだけど。どうかな?」
「どうって言われても……」
武下は、どうしても榊を交えたグループデートをセッティングしたくて仕方ないらしい。
じろっと睨んでみるけど、おれがムキになればなるほど武下は楽しそうだ。
「ね、榊さん。蒼生のために来てやって」
武下がおれを横目にニヤッとしながら、榊に向かって顔の前で軽く手を合わす。
もはや、誘い方が強引過ぎて呆れる。というか、ちょっと引く。それに、榊の前で、おれだけモテないみたいな言い方をされてるのも腹が立つ。西沢だって、ほんとうはカノジョなんかいないのに。
ムスッとしていると、榊がおれの様子を窺うようにチラ見してきた。
「時瀬くんは、わたしでいいの?」
「え……?」
「時瀬くんには、仲良くて誘えそうな子、他にもいるんじゃ……」
榊が、おれから視線を外して言葉を濁す。
武下の誘いが強引で自分で断りきれないから、おれから断ってほしいってことだよな。榊の態度からそれを察する。
おれだって、そうしてやるのが最善だって思うけど、榊の態度に少し複雑な気持ちになってしまうのはなぜだろう。