目印って、これか……? 

 榊のスクールバッグには、白くてふわふわしたクマのぬいぐるみのキーホルダーがぶら下がっている。

 最近いろんな企業ともコラボしている人気シリーズのキャラクターだ。

 中学生のとき、三ヶ月くらい付き合った女の子がこのシリーズのキャラクターが好きで、文房具とかキーホルダーを持ってた気がする。

 榊も、好きなのかな。

 差し出されたカバンにくっついてゆらゆらしているキーホルダーのぬいぐるみを眺めていると、榊が不思議そうに首を傾げた。


「時瀬くん?」

「あー、了解。持ってっとく」

「それでは、千円からお預かりします」

 カバンを受け取るおれの声にレジの店員の声が重なる。おれから注意を逸らした榊が、指で髪を耳にかけた。その横顔を無意識に見つめてしまっている自分にハッとする。

 席取っとくって言ったくせに、何やってんだ。

 慌てて自分を諌めると、おれは早足で二階席に続く階段を上がった。