「ごめん。なんか、おれ、余計なこと言ったんだよな。今日はもうやめる? ていうか、もうそれで出しちゃえばよくない?」

 フォローの言葉を出し尽くしたあと、最終的にそう言うと、榊は黙ってうつむいた。

 描けないってごねるくせに、納得いかない絵は出せないのか……。なんか、面倒くさいな。

「じゃあさ、おれが手伝うわ」

 見知らぬ男が描かれているスケッチブックの前に立つと、おれは榊の手から強引に鉛筆を奪った。

「なんかさー、目と目の幅とか眉の位置で顔の雰囲気って変わる気がするだよね。榊の絵はパーツは悪くないから、配置を整えればいいんじゃない?」

 榊の描いた顔のパーツをちょっとずつ消しゴムで消すと、目や眉の位置を微調整する。そうやって、それぞれのパーツの配置をひとつずつ変えていったら、榊のオリジナルの男よりはおれっぽくなった気がした。

「んー、こんなもん? どう思う?」

 完成した絵を持って、自分の顔と並べてみる。

「どう、かな……」

 自分的にはだいぶおれっぽく仕上がったと思ったのに、榊の反応は薄かった。顔の強張りは消えているけど、表情が乏しくて何を考えているのかはよくわからない。

 やっぱり、榊は少しとっつきにくいやつだ。