「え、ちょ、なに?」
「近くで触れたら、感覚やにおいで蒼生くんだってすぐにわかるよ」
「に、におい!?」
「うん、蒼生くん、いつも甘くていいにおいがする」
おれの背中に両腕を回した柚乃がそう言って、左胸のあたりに頭を擦り寄せてくるから、死ぬほど動揺して心臓が口から出そうになった。
「蒼生くん香水付けてるの?」
「付けてないよ。服から匂うんだったら、おれの母親が海外製の柔軟剤好んで使ってるからかも。洗うと香水みたいなにおいになるとかって」
「そうなんだ。わたし、このにおい好き」
「そう、ですか……」
母親が使っている柔軟剤の匂いなんて気にしたこともなかったけど、柚乃に好きって言ってもらえるなら、それを好んで使ってくれている母親に膝をついて感謝すべきかもしれない。