「とりあえず、謝ってもらえたからわたしは陽菜のこと許そうと思ってる」
「許すんだ? お人好しだな」
「他の人にされた嫌がらせだったら許したかどうかわからないけど。陽菜だから……」
柚乃がボソリと、おれに言葉を返してくる。
心配なんかしなくても、柚乃は江藤のことが好きだ。それに、おれと付き合ったからって江藤の友達を辞めるようなやつじゃない。
おれよりも付き合いが長いくせに、柚乃のことをちゃんと信じてやらなかった江藤はバカだと思う。
「蒼生くんはどうかな。怒ってる?」
黒目がちの瞳に見つめられて、しばらくじっと考える。
柚乃の心配そうな顔を見たら、怒ってるとも許せないとも言えない。
正直なところ、おれにとってはブレスレットが無事に手元に戻ってきたってことだけが重要で、それを盗ろうとした江藤や横谷の動機にはあまり興味がなかった。
「うーん。柚乃が目印でしかおれを見分けられないって見くびられてたこととか、ブレスレット盗んで別れさせようとしたこととか、柚乃のこと泣かせたことはすっげー腹立つけど……。友達をとられたくないって思った江藤の気持ちは全くわからなくもない。小学生のとき、自分と一番仲良いと思ってたやつが他のやつと遊んでるの見て、おれの友達なのにって軽く嫉妬した覚えはあるし」
「じゃあ、怒ってない?」
「別に。おれは怒ってないよ」
「そっか。よかった」
ほっとした声でつぶやいた柚乃が、ふわっと無防備に笑う。その笑顔に、おれの胸がきゅっと狭まった。