おれが首を傾げていると、柚乃が少し躊躇するように口を開いた。
「実を言うとね、陽菜はずっとわたしが蒼生くんと付き合うことを反対してたんだ」
初めて聞かされる話しに、「は?」と口が間抜けに開く。
「陽菜と仲良くなった中三のとき、わたしも陽菜もお互いに人間関係がうまくいってなかったんだ。わたしは顔の区別ができないことを自覚して悩んでたし、陽菜は仲が良かった友達が初めての彼氏に夢中になっちゃって……。それまですごく仲良くしてたのに、急に陽菜とは口も利かなくなっちゃったの。それ以来、陽菜は男の子のことをちょっとだけ敵視してるっぽくて。わたしのことも蒼生くんにとられちゃうんじゃないかって思ってたみたい」
中学時代に仲の良かった友達を彼氏に『とられた』と感じるような経験を江藤は、おれと付き合いだした柚乃も自分から離れて行ってしまうのではないかと不安だったらしい。
それで、おれと柚乃を別れさせようと付き合いに反対したり、おれの悪い噂を聞き集めて柚乃に教えていたそうだ。
だけど、江藤がどれだけ意地悪を言って揺さぶっても柚乃とおれは別れそうにない。それどころか、江藤がおれのことを悪く言えば言うほど柚乃がおれのことを庇うから、内心、かなり焦れていたらしい。