「ちょ、柚乃?」

 困ったようにわたしを呼ぶ蒼生くんの声を聞きながら、もう大丈夫だと思った。

 蒼生くんの顔は、変わらずぼんやりとしてうまく認識できないけど。蒼生くんの笑った顔も、怒った顔も、照れた顔も、泣いた顔も、わたしにはちゃんと見分けられないけど。

 わたしの名前を呼ぶ優しい声も、抱きしめてくれる腕の温かさも、漂ってくる優しくて甘い香りも、全部。蒼生くんと他の人とではまるで違う。

 わたしは、わかりやすいブレスレット(目印)をつけてくれる男の子が好きなんじゃない。

蒼生くんが蒼生くんだから。彼のことが、どうしようもなく好きなんだ。