わたしから後退りながら、蒼生くんがターコイズブルーのブレスレットをズボンのポケットに押し込む。
「ごめんね、榊さん」
ドキッとした。耳に届いた蒼生くんの声や言葉に、あきらかな違和感を感じたから。
左手首に着けていた青のブレスレット。明るい茶色の髪。わたしよりプラス20センチほど高い身長。いつも踵を潰して履いている上履き。
そのどれもが蒼生くんの特徴を捉えているのに、何かが違う。そう思った。
「あなた、誰?」
心臓をドキドキと鳴らしながら恐る恐る訊ねると、ずっと蒼生くんだと思って話していた男子がふっと鼻先で笑った。
「誰って、時瀬だよ」
何を当たり前のことを訊いてくるんだ、という。そんな感じの言い方だった。その声が蒼生くんのような、違うような。微妙なトーンで耳に届いて混乱する。
やっぱり、今わたしの前にいるのは蒼生くんなの……?
ところどころに違和感があるのに、はっきりと判別がつけられない。