君だけのアオイロ


「なに……?」

 緊張でうわずった声で訊き返すと、蒼生くんが「実はさ……」とつぶやいて口を閉ざす。


「ここに戻ってくる前に、別のクラスの女子に告られた」

 しばらく間をためたあとに、蒼生くんの口から零れた言葉は衝撃的で。驚いたわたしの口からは「へ?」という間抜けな声しか出なかった。

 別のクラスの女の子に告白された。そんな蒼生くんが、わたしに話したいことって……? そんなの、考えるまでもない。

 これから何を告げられるのか、想像できることはたったひとつしかなくて。嫌な予感に、心臓がドクドクと暴れ始めた。


「その子に告られてちょっと考えたっていうか、心が動いたっていうか。おれのこと、ブレスレット(これ)でしか判別できない子とこのまま付き合っていくのってどうなのかな、って」

 まばたきも忘れて目を見開くわたしに、蒼生くんが左手首のブレスレットを指し示す。


「どうなのかな、って……?」

 なんとか言葉を返したけれど、掠れてうまく声が出ない。唇と喉の奥が渇いて、からからだ。

「聞かなくてもわからない?」

 蒼生くんの声が、冷たく響く。

「わたしとは別れて、告白してきた子と付き合いたいってこと……?」

 震える声で訊ねるわたしに、蒼生くんは何も言わない。何も言わないことが、わたしの質問への肯定なのだろう。