君だけのアオイロ


「待たせてごめん」

 踵の踏まれた上履きを見つめて首を傾げていると、彼の声が落ちてくる。それがわたしの思考を遮った。

「大丈夫だよ。それよりも、山崎先生の誤解は解けた?」

 顔をあげようとして、ふと、彼の左手首にある青いブレスレットに目が留まる。

「蒼生くん、それ見つかったんだね。もしかして、更衣室にひとりで探しに行ってたから遅かったの?」

 蒼生くんに手首に戻ってきているブレスレットを指さしながら笑うと、彼が「え、あー、うん」と曖昧な返事をした。

「どこにあったの? ロッカーの中? 見つかってよかったね」

 嬉しくなって声のトーンが上がるわたしとは裏腹に、「あー、うん」と頷く蒼生くんのテンションは低い。

 ブレスレットを失くしたことを気にしていたから、見つかったことを喜んでいると思ったのに。蒼生くんはあまり嬉しくなさそうだ。


「どうしたの? もしかして、山崎先生の問題のほうはまだ未解決?」

 心配になって訊ねると、蒼生くんが顔の中央部分、ちょうど鼻の辺りを右手の人差し指で擦った。